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「彼(ティルマンス)の政治性の根本にあるのは、性的なことだけじゃないんですね。カムアウトしたゲイとして活動してるわけだから、自分にとっての「自然」が他人にとってはスキャンダラスだということは最初からある。だけど、彼の政治とのかかわり方でおもしろいと思うのは、「sameness」ということです。ただしその際「同じであること」の対立概念は「アイデンティティ」なんですよ。たとえば、「あなたはゲイです。私はヘテロです。みんなお互い違う人間なんだから、その差異を大切にしあおうよ」という考え。これは彼にとってはむしろ敵視すべきことだと思うんです。この言い方というのは、いわば領分を守ってお互いを干渉しないってことですよね。それは逆に言うと、「あなたはホモでけっこうです。私はそうじゃないし、あなたに関心はありません。私的なことを持ち込まないでください」って話になるわけ。でも、カムアウトすることがすごく政治的なのは、「あなたのその線引きはやめてほしい」ということですよ。プライバシーとオフィシャル、我々が自然に前提としているもの、アイデンティティによる棲み分けの思想、そういった輪郭をほどかせるということなんですね。(…)たとえば「ヒトラーは悪いやつ、でもある面では自分と一緒だ」とか「ある面は愛せる」とかね。ある決まった輪郭を守るのではなくて「輪郭を流動化する」っていう政治行動なんです。
— 清水穣×後藤繁雄対談『「見る」行為と写真のポストモダン』,美術手帖(2004.11)